福岡リノベクロニクル #3
進化するリノベの教科書
リノベエステイトの自社ビル、BLDG64。リノベの教科書のようなビルです。
1964年。東京オリンピックの年に完成した4階建ビル。
2010年にリノベエステイトさんの自社ビルとなり、1棟まるごとリノベーションされました。
企画・デザインはもちろん松山さん。
コンセプトは「SPACE for CREATOR」
クリエイターのための場としてプランニングされています。
1Fは商業テナント。フレンチレストランが営業中。右横の建物エントランスから階段へ。
10年前にリノベーション済。ざっくりと仕上げられた空間。時を経て劣化ではなく、アジか出て深みを増している。
グーグルスピーカーに宅配ボックス。1964年完成の古ビルだけど、センスよく、そして溶けこむように最新が散りばめられていている。
この2階ホールの足元に置かれたスピーカーにちょっと感動。音楽(ジャズ?)が階段室を静かに伝わり反響して、素敵な環境をつくりだしている。これは目に見えないデザイン。
2Fはリノベエステイトさんのショールーム兼レンタルスペース。自分たちで使わないときは、外部に時間貸ししている。
キッチンがついているから、パーティースペースとしても。
レンタルスペースの予約や決済、セキュリティーなど、テックを組み合わせて運営。高額な費用のかかる業者に任せるではなく、ある意味DIY。ノウハウが蓄積されていっている模様。
2重サッシで断熱対策。深夜まで働くこともあるクリエーターのためにシャワーブースも。ただカッコイイだけでなく機能も充実。
リノベの現場から発掘された木彫りのクマ。遊び心もあちこちに。
3Fはミーティングスペース&シェアオフィス&自社スペース。猫のデザインのマットがペットの存在を予感させる。
ミーティングスペースは建物全体の入居者さんが利用可能。本棚の奥がシェアオフィス。そのさらに奥が自社スペース。
4階には三つのスモールオフィス。階段をさらに上がると屋上へ。
塔屋の壁にかけられていたホウキ。ずらしてみるとマスキングテープで可愛く絵が書かれていた。この絵のおかげでホウキが行方不明にならなくなったとのこと。きちんと片付けたくなる仕掛け。デザイン会社ならではのアイディア。
都心の贅沢なスペース。休憩や交流の場として入居者さんに開放されている。パーティーやグランピング、たまにはレンタルスペースとして貸し出すことも。先日はロケ場所として使われたとのこと。色んな利用の仕方があるものです。
屋上から下りてくるとドアの向こうに綺麗な猫が……やっぱりいらっしゃいました。
2011年の初めに第1期のリノベーションが完成したあとにも拝見したけど、それから確実に進化していました。
その頃の福岡リノベは、3DKの間取りを1Lに変更したり設備を一新するなど、ハードな部分のリニューアルが中心だった。やがて住宅をオフィスに変えたり、シェアや民泊など使い方そのものを見直す流れに。
ここBLDG64も当時はデザインを良くして住宅からオフィスへ、そしてシェアスペースを検討し始めたくらいだったと思います。そこから随時、機能や使い方をアップデート……今では、自社のショールームをレンタルスペースとして運用するまでに進化しました。このことは、松山さんが自社ビルを使って不動産の可能性を探り、実験を繰り返した結果であるともいえます。
松山さんいわく「当時、シェアは想定していたけど、さすがにレンタルスペースまでは考えてなかった」とのこと。ネットの発展がもたらす目まぐるしい変化に対応し、小刻みに進化していったことが伺えるコメント。
そしてこの実験は、スペース的に余地が少なくなってきたBLDG64を飛び出し、松山さんが新しく取得した二つの不動産へと広がっていくのでした。
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