小倉のリノベーション事例
TEXT:春口
先日、お誘いを受け、小倉中心地のリノベーションの事例を案内してもらうことに。
ワンルームマンションからシェアハウスやコワーキングスペース、テナントビルまで様々な物件を見学。また、つくり手や施設を運営されている方々と話をすることもでき、いい刺激になった。
多くの地方都市では人口減少や雇用問題などに直面していて、小倉もその例にもれない。でも彼らは危機感をモチベーションに変え、ソーシャル×リノベーションといったビジネスで問題を解決しようとしている。
一方、僕たちの暮らす福岡市はいまだに人口増加が続いていて、小倉とは違う状況にあるといえる。ただ、自分たちが暮らすまちをより良くしていきたいという想いは同じ。小倉で話を聞くことができた皆さんの取り組みは実に参考になりました。
というわけで、見学した順番にご紹介します。長くなると思いますが、どうぞお付き合いください。
■京町スカイマンション
小倉駅まで徒歩8分の場所に建つ中古分譲マンション。
1978年完成。当時のモダンを感じさせる外観。こちらの一室(ワンルーム)がスケルトンからリノベーションされました。手掛けたのは今回ナビゲートしてくださった建築工房T-Worksの徳山さん。現在、賃貸として入居者募集中。
コンクリむき出しの壁一面に大きな本棚。読書家の住いにはもちろん、コレクターのセカンドハウスや、事務所、ショールームなどにも良さそう。
詳細は募集窓口のアス・プラスまでお問い合わせください。
093-932-1001
■シェアハウス・COCLASS(コクラス)
場所は小倉北区吉野町。こちらは古ビルの4階ワンフロアをまるまるシェアハウスにリノベーションした例。
大きなリビングを囲むように6室の個室が配置されている。各室の内装は仕上げ前の状態。入居後、室内を好みにカスタマイズできるようにしている。共用部分のデザイン監修はあの夏水組。
ここの面白いところは、1階に、欲しい暮らしをDIYする拠点「はたらこくらす」という、DIYのワークショップ的施設があるところ。
1階でDIYを学び、4階で即実践することができる。また、1階では、引っ越し等で不要となったモノや、解体から出てきたパーツ等の販売も行っている。
運営しているのは1階4階ともに北九州家守舎さん。リノベーションスクールを運営されるなど、小倉のまちづくり活動の中心を担う方々です。
募集中の区画あり。興味のある方はお問い合わせください。
お問い合わせ
■シェアハウス・SHARE TERRACE
場所は小倉北区中島。こちらは古い戸建てを丸ごとリノベーションしてシェアハウスにした例。
以前は鉄骨屋さんの持ち物だったというこの戸建は、2階建てながら鉄骨造で、壁や天井がデッキプレート(通常は構造部分に使われる鉄板)でできているというコンテナのような珍しい造り。外部は玄関まわりと屋上だけに手を入れて、あとはそのまま使用。ここも良い意味で割り切っている。素材が面白いからありですね、この使い方。
1階にリビングと水まわり、そして個室が2部屋。2階に個室が4部屋あります。
リビングと水まわり、そしてこちらの屋上をシェアすることができる。
街と街の谷間のよう感じで存在する戸建の集落。この古くて小規模な住宅街の中に当物件はあって、風情のある景色を屋上から楽しめる。ここに初めて上ったときのワクワク感が決め手となり、現オーナさんは購入を決断したとのこと。ちなみにこちらのオーナーさん(物件に居住中)はまだ30代前半の男性。10代の頃、海外のシェアハウスで暮らした経験をもつ。また他の入居者さんも今のところ彼と同年代とのこと。男女の制限もなく、何かフリーダムで楽しげな毎日を想像してしまった。
募集中の区画あり。
[運営] ニューシング 0120-866-489
■シェアオフィス+コワーキングスペース・MIKAGE1881
場所は小倉北区魚町。小倉駅近くの商店街に建つビルの5階部分。クリエイティブ事業者のための施設。
リビングのようなコミュニティースペースとミーティングスペース、そしてシェアデスク等のオープンな空間をコの字型に囲うように7区画の個室が配されている。個室にはシェアスペースに面して窓が設けてあり、人の集まりを誘発するような構成。こちらの運営者も北九州家守舎さん。
お問い合わせは→ こちら
■シェアオフィス+コワーキングスペース・秘密基地
小倉北区京町。小倉駅まで歩いて3分もかからない場所に建つ商業ビルの3階部分。無骨な鉄板のエントランスドアが興味をそそる。
中に入ると思いのほか広く、100坪あるL字型のフロアがざっくりと3つの空間にゾーニングされている。入り口側にはカフェカウンターの併設されたコワーキングスペースあって、ここはイベントもできるオープンなエリア。その奥にはミーティング等に集中できる緩く閉じた空間。さらにL字を曲がった一番奥のエリアに9つの個室が並んでいる。入り口側がパブリックで、奥に進むほどプライベートな空間になっていくという構成。
地域振興を目的としたクラウドファンディングを立ち上げる計画があるとのこと。今後の展開が楽しみ。
お問い合わせ
秘密基地 093-967-1003
他にもテナントビルをご案内いただきましたが、ちょっと長くなってしまったので、今回はこれまで。
それにしても、お話を伺えた皆さんのモチベーションが高かった。
集まって情報をシェアし、互いにメリットを出し合える仲間を見つけて繋がり、仕事を創出してシェアする。点ではなく面となり、民間が上手に行政を巻き込んでいく。危機感をモチベーションに換え、一枚岩となって現状を打破しようとしている。…地方都市におけるまちづくりの最先端がそこにはありました。
一方、冒頭でも述べたとおり、同じ地方都市でも福岡市の置かれている状況は小倉と違っていて右肩上がりに成長している。僕たちも不動産取引とリノベーションを通してまちづくりに繋がるような活動をしているけど、そのモチベーションは「まちはもっと面白くなる!」というワクワク感から。恵まれた環境だと思います、本当に。
と同時に、この成長を続ける特殊な地方都市、福岡市には、九州や日本経済を活気づける役割があるとも思います。国家戦略特区にも選ばれたわけですし。そのために、何か新しく建てなくても、既存の建物やスペースを活かしてやれることは沢山あります。その話はまた別の機会に。