デザイナーインタビュー「コンパクトだからこそ、豊かに」

当サイトにて募集中の中古分譲マンション(タイトル「デザインの力を知る」)。
今回は、こちらの一室のリノベーションを手がけた建築家・松岡祐作さんにお話を伺いました。

ライオンズマンション薬院第5。地下鉄薬院大通り駅徒歩3分。都心ながら、閑静なロケーションに建っています。
室内はスケルトン状態から水廻りも含めてフルリニューア済み。

一級建築士の松岡さん。荒戸のアトリエにお邪魔しました。

>設計に取りかかる際、どのようなことを考えましたか?

この計画にかかわらず、私は常に、住まい手にとって今まで知らなかった新しい価値や喜びを提案したいと考えています。住まい手の「無理だろう」というあきらめをデザインで解消し、夢や希望をカタチにすることが私の役割だと思うのです。例えば、今回のマンションは50㎡弱しかありません。このサイズだと、一般的には大人が二人で暮らすには少し狭いといった認識でしょう。でも、コンパクトであることに価値を見出し、「コンパクトで不十分」ではなく「コンパクトだからこそ豊か」といったふうに価値を変換したいと考えました。

>コンパクトであることに価値を見出す・・・面白いですね。具体的にはどういうことでしょうか?

まず単純に物件価格が安いです(笑)。コンパクトならばリノベーションの費用も抑えられます。それから、管理費や修繕積立金等は通常面積に応じますので、そこらへんも安くなる。また、空調等にかかる電気代もそう。イニシャルとランニングコストを抑えられるので、その分浮いたお金を趣味などの楽しみに回せば日常が豊かになります。
また、都心に暮らすことも可能に。大人の二人暮らしの方が住宅を購入するとしたら、最低でも60㎡以上をお求めになるのではないでしょうか?このサイズのマンションを薬院で、しかも新築クラスを購入するとなると、4000万位にはなるでしょう。誰でも簡単に購入できる価格ではないですね。ところがコンパクトだと実現できます。都心に暮らすことにより通勤等にかかる移動時間を短縮できれば、時間的なゆとりも生じます。

>コンパクトであればコストを抑えられ、生活の様々な部分にゆとりが生まれるということですね。

そういうことです。私の建築家としてのテーマをひとことで言うと「機能性の追及」なのですが、コストも機能の一つだと捉えています。機能性を追求することにより、住まい手の要望を叶えていくことが私のスタンス。今回の計画でも機能をデザインすることにより、コンパクトな空間においてワンサイズ上の生活体感の実現を提案しました。また、機能の中でも、特に熱環境を重要視しています。

映りこみのする素材を使った天井や、壁の金属のパネルが室内を柔らかく映し出し、コンパクトな空間に広がりを与えている。このパネルにはマグネットで写真などを飾り付けることが可能。壁を有効活用するための機能も併せ持つ。
ガラス面にはプライバシーを守りつつ採光を取り入れるために半透明のシートが貼られている。ところどころが正方形にくり抜かれ、視界に奥行きをもたらす役割も。
納戸やクローゼット、天井まであるシューズボックスなど用途に応じて利用できる多様な収納を用意。 可動式の棚や玄関のコートかけ(ブラインド機能付き)など、生活のシーンに寄り添った細やかな配慮=機能が室内全体にちりばめられている。

>そういえば、室内を取材した時、ひやっと冷たい感じがしませんでした。

はい、熱損失計算を行い、然るべき断熱工事を行いました。熱環境は居心地の良し悪しに直結しますし、健康面から考えても非常に重要。先ほどの電気代等のランニングコストにもつながることです。古いマンションは不足しているケースが多く、改善していく必要があると考えています。

室内側に新たにサッシを設置。二重サッシとすることでペアガラス以上の遮音断熱性能を確保。 また、外部に面するコンクリート壁面には全面、外部に接するコンクリート床面には外壁から一定距離まで断熱工事を施してある。
リビング床の外壁に面する部分は磁気タイル張りとなっていてインナーバルコニーのよう。 タイルの蓄熱性・蓄冷性による熱環境の向上と重量のある植栽などを気軽に置けるよう計画。

>キッチンも機能的で使いやすそう。料理好きな松岡さんのこだわりが詰まっているのだと思います。

ありがとうございます。確かに料理は趣味の一つで毎日朝から自炊もしています(笑)。幅1800というコンパクトサイズながら、機能をしっかりと盛り込んでいますので、十分快適に使って頂けるのではないでしょうか?食に関することも生活においては大切な要素ですね。

機能性と美しさを追求したキッチンスペース。この部屋のコンセプトを象徴するかのようなコンパクトデザイン。手元を隠せる立ち上がり壁の上部にカウンターが設置してあり、こちらは料理の出し入れ時だけでなく作業の補助台としても活用できる。
目隠しやレンジフード側の壁面はマグネットの脱着が可能。付属の小物入れなど自由に設置でき、またメモなども簡単に貼り付けられて便利。
ゴミ箱を収納するためのスペースが確保(しかもゴミ袋を装着する部分まで設計)されていたりするなど、諸々、細やかな工夫が。

>食といえば、ワイン会を主宰されていますね。

はい、東京と福岡で年に4回程度開催しています。毎回、様々な教養や知性を有する方をお招きしてお話し頂いた後、ワインと食事を頂きながら、楽しいひと時を共有するサロンです。現在私は、「Ever DesignLife Project」という住生活全般、主に「住」と「食」に関する活動を行っています。趣味的なことから始まったワイン会は、今ではこのプロジェクトの一環となるイベントへと成長しました。

>「住」と「食」。松岡さんの幅広い活動が伺えます。今後について教えていただけますか?

「Ever DesignLife Project」を本格的に展開していきます。昨年、不動産業者としての免許をとり、現在は建築だけでなく不動産の領域も手がけるように。今年4月から義務付けられるホームインスぺクションに関する資格も取得しました。さらに「食」の分野への取り組みも進め、住生活をトータルでプロデュースできる体制を構築していきたいです。もちろん自分一人では実現できないので、様々な専門家や企業とネットワークを組み、協業によってクライアントの要望に応えていければと考えています。

2018年3月 松岡祐作デザインオフィスにて


募集情報の詳細は
→ 「デザインの力を知る
より覧いただけます。

株式会社松岡祐作デザインオフィス
一級建築士/松岡 祐作
福岡市中央区荒戸3-2-5 東峰マンション西公園1001
Tel:092-753-8617
Fax:092-753-8618
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