Hotel Moon Beach
今回は番外編。
沖縄のホテルのご紹介です。買えませんのでご注意ください(笑)。
4月上旬のはなし。家族で沖縄にいってきました。
前回は初リゾートの息子のためにわかりやすいホテルにしましたが、今年は大人の希望を優先し、以前から気になっていたホテルムーンビーチに宿泊。
先日、大量に撮影した写真を整理している最中、ここはいつもセレクトルームをご覧いただいている皆さまもきっとお好きだろうと思い、今回記事にすることに。
地下1階地上4階建。三日月形のビーチを抱くようにL字に配置された建築です。
1975年 沖縄のリゾートは、ここからはじまった。
夜間飛行のアメリカ人パイロットが偶然見つけた月光を浴び輝く三日月形の白浜。
その息をのむ美しさに“ムーンビーチ”と名付けたと言われます。
のちの1975年、この浜に「ホテルムーンビーチ」は創業しました。
沖縄ビーチリゾートの歴史は、そこからはじまります。
– ホテルのホームページより抜粋 –
国道58号線から海方向へ少し入った場所。小さな通りの途中にポツンとゲートがあって、そこから先がおそらくホテルの敷地。ゲートの他には特に境界を意識させる柵などがなく、内外が曖昧になっていて面白い。
ゲートから少し進むとサインが控えめに登場。緩やかな坂のアプローチ、そしてガジュマルのトンネルを抜けると、
徐々にその白い建築が姿を現す。
白い外壁にオーシャンブルーのロゴ。段状にセットバックしたモダンデザイン。
やっと出会うことができました[Hotel Moon Beach]。
古き良き時代の面影を存分に残したリゾートホテル。
オリジナルと思われる風合いのあるタイルや椅子たちに目が奪われる。
オリエンタルムードたっぷりなロビーの椅子。
にやけそうになる顔面を引き締めて冷静を装いつつ、館内を鑑賞。
もう、この辺をチラ見しただけで、ここに来てよかったと喜びを密かに噛み締めたのだけど、これはまだほんの序章でした。
外部に向かって大きく開かれたラウンジ。段々と海へとおりていく感じでビーチとシームレスにつながっている。建築全体において内外が曖昧に計画されていて、その大胆さに感動。でもまだこの辺も序章……。
どこまで内部なのか?どこから外部?
圧巻だったのは、
5層の建築の吹き抜けに茂るツタのカーテン。
そしてなんと、上部はガラス張りかと思いきや、なんと屋根はなく、吹き抜けならぬ吹きさらしでした。つまりここは外部であるということ
のびにのびたツタの森。上部に屋根は有りませんでした。
ツタの森が鬱蒼と迫る池には近くの海からやってきた(獲ってきた)色とりどりの魚たちが泳ぎ回っている。
陽光と緑と水と……自然と建築が見事に溶けう風景を堪能できます。
岩のような天然石もあったりして、まるでジャングル。池のまわりを回遊でき、水の上にはブリッジまで。
ホテルのスタッフの方が通りかかったのでメンテナンスについて聞いてみたら、台風が来るたびにこの巨大なツタのカーテンをぐるぐる巻にして備えるのだそう。池の魚も心配だし屋外用ではない椅子などがあちこちに配置されているので、悪天候のときはきっと大変。別のスタッフの方とも話す機会があったのだけど、皆さん、このホテルについて熱心に語ってくださいました。関係者が想いをもって運営している……素敵なヴィンテージマンションと同じですね。
ちなみに、僕らが宿泊した2階フロアのロビーのようなスペースは改修中で使用できなかったり、耐震改修を含めた工事があちこちで進行中……工事による若干の不便さや、ところどころ老朽化した箇所も見受けられましたが、オリジナルを大切に活かしながら歴史をつないでいこうというスタンスに、あらためて感動&共感。高さはないけど大きくて複雑な建築、しかも営業しながらなので、きっと大変な作業だろうと思いますが。
お部屋は40㎡ほどのワンルーム。海に向かってルーフテラス付き。
さっぱりとリノベーション済みでしたが、外部から続く床のタイルはおそらく既存のもの。
室内の改修も計画的に進められている模様。
ベッドに横になり、海を見たり本を読んだり昼寝したりできます。
二日目の朝はテラスで食事しました。
テラスの向こうは海と緑のムーンビーチ。
サニタリーの洗面台とは別に、室内には流し台が設置されていて、クッキングヒーターを借りれば調理もできる。マンスリーのプランもあって、例えば慌ただしくヨーロッパに1週間旅行するのだったら、もう少し予算をプラスして、ここで1ヶ月ワーケーション……ひたすらのんびりと過ごすのもありだなと本気で考えました。仕事柄なかなか難しいけど。
ナチュラルで感じの良いインテリア。白い照明に惹かれました。
外部通路から玄関、水まわりまで雰囲気のある(おそらくオリジナルの)タイルばり。
ビーチからサンダルを脱がずそのままバスルームにいけるよう、設計されているのでしょう。
ガラス張りのバスルーム。ブラインドを開ければオーシャンビュー。
4階に上ってみると、海に向かうロビーがあって、その先には例の
ツタのカーテンの上部が。吹き抜けに面して回廊があり、そのまわりに客室が配置されています。
ムーンビーチに臨むロビー。半屋外になっています。
ここの椅子がまた良かった。
4階から一気に海まで下りていける階段。屋根がガラス張りになっていて、海に向けて開放的。
RCのスケルトン階段がこれまたタマラナイ。
迷路のような建築の随所にこんな素敵な階段が配置されています。
プールサイドの螺旋階段。これはもう、反則技といってもさしつかえないでしょう。
もっと引いてプールと一緒に撮影したかった(プールも良かった)のだけど、それなりに人がいたのでやめておきました。
施設のあちこちに素敵な椅子やらテーブルが置かれていて、居場所がたくさん。本気でワーケーション希望です。
ストーリーを感じさせる写真だったり、
絵画やオブジェ等のアートがあちこちに展示されていて、施設全体がミュージアムのよう。
石やタイル、木などの天然素材がふんだんに使われていて、いい感じに経年変化した内外装。
70年代からタイムスリップしたようなデザインが現役で。
夕暮れ時も素晴らしかった。
というか、情報量が多すぎて、正直消化不良でした。
2泊ではなく3泊。せめてあと一泊はしたかった……。
1975年完成。沖縄がアメリカから返還されたのは1972年のことだから、返還直後に計画が入ったのでしょう。沖縄の新時代の幕開け、そして沖縄における本格リゾートのさきがけ……事業主や設計者の熱い想いに触れることのできるホテルでした。
設計:国場幸房 氏
余談ですが、Wikipediaによると、事業主の経営不振のため、2001年より地場のビール会社や電力会社、銀行などの大手企業が出資した新会社にて運営されている模様。
地元の宝とも言える建築/ホテルを残し、歴史をつないでいこうという地場企業の心意気でしょうか?
そうだとしたら、何ともうらやましい……。
思いのほか宿泊費が手頃。建築好きな方、ぜひ。